3.グリースの構成要素
(1)増ちょう剤
潤滑油(基油)を保持し、グリースのあのねっとりとした半固体状の性質を与えるのが、増ちょう剤です。
グリースの骨組みは石けん!
増ちょう剤として一番多く使われているのは金属石けんです。(石けんと聞くと「エッ!?」と思われるかも知れませんが、ここでは難しいことは抜きにして、そういうものだと思ってください。)
これは電子顕微鏡で見ると、繊維が絡み合って網の目のような構造になっています。ですからスポンジより海綿(かいめん)か糸瓜(へちま)にたとえた方がいいかも知れません。この絡み合った網の目の間に、基油が含まれているわけです。
網が破れたらアウト!
ですから何かの理由で網のメガ破壊されると、基油は流れ出し、グリースは柔らかくなって潤滑部分から漏れるようになってしまいます。
グリースの性質は増ちょう剤次第
増ちょう剤には金属石けん以外の、非石けん系のものもあります。
増ちょう剤には種類によって熱に強いもの、水に強いものなどさまざまな特長があり、この増ちょう剤の性質によって、グリースの性質が決まります。
例えば、120℃以下ではリチウム石けん系、120℃以上では非石けん形のウレア系、シャーシーグリースのように、80℃以下で、水をかぶるような所には、カルシウム石けん系、が使われます。
そしてその性質によって、使い途が決まります。
■増ちょう剤別のグリースの特性比較
RYOWA CORPORATION |
耐熱性 |
最高使用
可能温度(℃) |
耐水性 |
機械的
安全性 |
備 考 |
石けん形 |
カルシウム
石けん |
牛脂系脂肪酸 |
X |
70 |
〇 |
△〜〇 |
構造安定剤として1%前後の水分を含む |
ひまし油系脂肪酸 |
△ |
100 |
〇 |
〇 |
カルシウムコンプレックス |
〇 |
120〜150 |
〇 |
X〜〇 |
経時または高温で硬貨する傾向がある |
ナトリウム石けん |
〇 |
100〜120 |
X〜△ |
△〜〇 |
− |
アルミニウム石けん |
X |
80 |
〇 |
X〜△ |
粘着性が良い |
アルミニウムコンプレックス |
◎ |
130〜160 |
◎ |
△〜〇 |
長時間高温にさらされると構造破壊して軟化する |
リチウム
石けん |
牛脂系脂肪酸 |
〇 |
120〜130 |
〇 |
〇 |
最も欠点が少ない |
ひまし油系脂肪酸 |
〇 |
120〜130 |
〇 |
◎ |
非石けん形
(無機形) |
有機化ベントナイト |
◎ |
150〜200 |
△〜〇 |
〇 |
水の存在下で発錆しやすい。長時間高温使用すると炭化する |
シリカゲル |
◎ |
150〜200 |
X〜△ |
X〜△ |
水の存在下で発錆しやすい |
非石けん形
(有機形) |
ポリウレア |
◎ |
150〜200 |
◎ |
〇 |
高温ではかたくなる傾向がある。油分離はきわめて少ない |
ナトリウムテレフタラメート |
◎ |
150〜200 |
〇 |
〇 |
油分離が特に大きい |
凡例 ◎=優 〇=良 △=可 X=不可 |